第二章 森国の事情

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帝国軍には規則がある。それは私のような隠力者であっても例外ではない。勝手な行動が許されないのは前提であり、特に国対国に関する問題は慎重を要する。   つまり段階を踏めということらしい。まずは森国に行き、入国許可証をもらわなければいけない。   しかしこのスーツという服はどうも落ち着かない。軍服は目立つからと言われ、公的な服装にしたのだが早く脱いでしまいたい衝動に駆られる。   船着き場から出て彼女は間もなく見つかった。金髪はこっちだとわりかし多いので手を振ってくれなかったらまだ首を回していただろう。   「もう駐在して四年か。森国には慣れたか?泪」   握手を交わし、彼女の顔を伺う。学園にいた頃よりも穏やかになったような気が心なしかする。泪は元来この国が出生だからとも言える。   隠力執行部に所属はしているが、彼女は外務員としてなのでほぼ羅国にはいない。数ヶ月に一回、報告に帰って来るのを除けばずっと森国に住んでいる。   「はい。蓮花さんも何よりで。お話は聞いております。許可証はすぐに発行されますので、その間に少しこちらの事情を教えておきたいのですが……」   「歩きながらでも大丈夫なのか?」  国家機密ならばおいそれと立ち話とはいかない。   「いえ、首都に私の家があるのでそちらで」  
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