第十二章 境界の先に

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ラスターだけがごねているわけだが、私は力技でしか相手を説得させる方法を知らない。   だが今の私にはその力さえない。しないと言うのならば諦めるしかない。   「……ラスター。ロゼは今愛する者に会うために行動している。それを咎める事など何故できる?」   コクリュウが……喋った。低い声で間違いなく口を開いている。   「そりゃあ知ってるよ。でもコイツ意志弱いじゃん。魔生物馬鹿喰らいしちゃうし」   「ヒトは成長できる生き物。ロゼは二度とあのような事はしない」   コクリュウは私を信じている。普段は何も話さないのに、確かな絆を感じる。   「うん。約束する」   彼らは私と共に生きている。『クロ』は私の事だけど、『ロゼ』は私達の事だ。私はどちらでもいたい。   「ヒッヒッヒ。ラスターよぉ、これでもか?」   「仕方ないね。ほら、ロゼ。現実世界に戻りな。私の力、あんたに預けるよ」   でも戻るにはどうすれば?とりあえず目をつむり、向こうに意識が行くように念じてみる。   「……ハッ!?」   「ロゼお姉様?どうなさいました?」   現実だ。隣にはシーがいるし、下にはタイラもいる。   「私、どれぐらい止まってた?」   「一分くらいですわ。急に静止するから驚きましたわ」   もっと意識下にいた気がする。時間感覚が違うのか?  
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