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「闘刃君、ひょっとして……」
「あぁ、これか。発信器と録音器になっているらしい」
らしいって。今それを話しても大丈夫なの?
でもここは境界の底?だろうか。発信器としては機能しないのかもしれない。
「闘刃君、ここは?」
「オウルイーターの中だ」
オウルイーター。聞いたことのない名前だ。
「唯一生き残っている太古の生物らしい。全てを吸い込み、吸収する巨大な化け物で、境界の管理者とも呼ばれている」
じゃあ私達は今その生物の中にいるということ?それにしては内部は随分無機質な感じがする。
生臭い匂いもしないし、地上と同じ空気もあるようだし。
「しかし落ちるのは計算外だった。本当は俺だけで入るつもりだったんだが」
「境界の下に行く予定だった?」
「自然な形でな。そういう意味では悪くない状況だ。さて……」
闘刃君は眼鏡を外して遠くを眺めている。何か探している?私には方角すらよくわからない。
「最深部に行く。……来るか?」
「へ、あ、うん」
彼のすぐ後ろを続いて歩く。明かりは前にしかなく、背後は暗くて視界が良くない。
何となく今なら聞ける気がして私は口を開いた。
「どうして私達と敵対をしているんですか?」
「……別に敵対しているわけじゃないんだがな。お前達を魔生界に入れたくなかっただけだ」
身を案じてたとは思うけど、闘刃君ってそんな優しさなんてあったっけ?
「私は戦えますよ?」
「本当か?」
足を止め、私の方を覗いてくる。感情がよくわからない。でも、地上にいた時とは何か違う。
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