第十三章 天獄の管理者

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すぐにまた前を向き、前方へ進む。にしても長い道のりだ。   「闘刃君は……私がここに来て怒ってますか?」   「来て欲しくはなかったな。万国は平和な国じゃない」   そういえば羅国は内乱がほとんどなくなり、昔と比べれば随分平和になったと感じる。今一番危険な国は万国。現状を知る者なら誰でもそう見なすだろう。   「だが怒る必要はない。来たのならば自分の身は自分で守る。それだけだ」   ようやくだ。辺りが真っ暗から薄暗いまでに明るくなる。実際にはまだ全然夜のような光景だが、狭さは感じなくなった。   何か広い空間に出たらしい。   「オウルイーターに飲み込まれて生きていた者はいない。そんな言い伝えがある。おそらくは生きて外に出られた者はいないという意味だ。現に俺達は死んでいない」   「そういえば、あんなに落下したのに無傷ですよね」   私の予想だと闘刃君が何かしたんじゃないかと思っている。だって怪我はないかと聞いてきたし。   でも私のためにここまで来たわけじゃない。それはわかる。闘刃君は自分の命を最優先する隠力者だ。   ……とか思いながらちょっと期待している自分もいる。   「気配がするな」   闘刃君が偽剣と小手を生成し、警戒を強める。私も隠力を発生させ、電圧を槍にかけた。   確かに。何かがいる。しかしはっきりしない。隠れている?   「人間?にしては匂いが違う」   思わず息を飲んだ。暗くて見えないんじゃない。本当に首から先がない。銀色の鎧に身を包んだ謎の生き物が私達の前にいる。   いや、顔は手に持っているのか。だから正常だとは考えられないが、言葉はそのはずれた頭部から聞こえる。  
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