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「みことはどこを走ったって言ってたっけ?」
「山の方……」
みことは、口を尖らせてそう言った。
みことから本当のことが聞けると、優真はにやけていた顔を安堵の顔に変えて椅子に座り、ため息をこぼしてみことを見た。
「いいか? みこ……」
「まぁ、そのくらいにしといてあげなさいよ。とにかく無事だったし、このリスちゃんを見捨てなかったのも、この子が優しい証拠じゃない。それとみことは、朝ごはん食べちゃいなさい」
麦茶と食パンの乗ったおぼんを持ちながらそう言ったのは、母の梨桜だった。
みことはそれを受け取り、席について食べ始めた。
みことを助けた梨桜は、そのまま優真の隣の席に座り、腕に抱きついた。
「私たちの子どもが成長してる。喜ばしいことじゃない」
「ママ、しかしな……」
「まったく、そんなパパでは嫌われちゃいますよ」
優真は妻の梨桜には弱く、何も言い返せないで、うなだれていた。
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