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しかし、木々が生い茂る大杉の森は、それだけでも視界が悪い。
さらに暗闇という悪条件は、シアンの行く手を拒んだ。
「先に進んでるのか全くわからない……」
一向に景色は変わらず、未だ森の中。
シアンは、木から木へ渡りながら先に進む。
「やっぱり体が小さい分、進まな……ん? あのでかいのは何だろう?」
シアンは、木々の間から、この先に他の木より一段と大きい木がある事を見つけ、そこに向かった。
「ここなら目立つかもしれない」
そこは、中央に大きな木がそびえ立っていて、木の周りには特に何もない広場になっていて、この森の中ではずば抜けて見晴らしが良かった。
「体力的にもきついし、魔力も残りわずか……」
広場を歩き、大きな木を見上げる。
天空を指すように伸びる木は、おそらくこの山で一番大きく目立つ。
「……仕方ない。テレパシーを使って、誰かに助けを求めるしかない」
シアンは、大きな木の太い根の上に座って、目を閉じて念じ始めた。
「頼む、誰か受け取ってくれ」
風に揺れる木の音だけが響く森の中。
念じ終えたシアンは、疲れからか、再び瞳を開けることなく眠りに落ちていった。
そして、シアンの思いは、夜風に運ばれてどこかに向かった。
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