序章

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黒く長いボディのこの車は、ただ今海岸沿いを走っています。 つまり、今は車に乗って、帰り道です。 私たちが住むここ、雛野市(ひなのし)は海にも山にも近い場所にある所で、夏には海に行き、春や秋は山に行って花見や紅葉を楽しむことができます。 とにかく、お得な所です。 まぁ、車って言うよりも、これってリムジンって言うんだけどね……。 これがいつもと変わらない、私の日常だった。 だけど、私はこの生活がいつまでも続かないことを知っていた。 いずれは小学生じゃなくなり、中学生や高校生になり、大人になっていく。 出会いがあり、別れがあり、生があり、死がある。 私は小学生ながら、そんなことを考えていました。 「おーいみこと、着いたぞ」 「あっ、ありがとう」 すでに車は止まっていて、私はドアを開けて、車から降りて少し歩いて振り返る。 波の音と一緒に聞こえる声。 そこには、リムジンの窓から体を乗り出して、手を降る雫ちゃんがいた。 「また明日なー!」
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