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逃げろという思いと望みを込めて、渾身の力で弟を蹴飛ばした。
そんな、時だった。
「あいてっ」
オレは、男の腕から開放されて、袋の上に落ちた。当然、すぐに後ずさって、袋から離れる。
チャンスだ! オレは逃げるために起き上がろうとしたがしかし、そこで気づく。
「あれ……?」
オレの右腕を、まだ男の腕が握っていることに。
切断されたような男の肘から下の部分が、オレの右腕にくっついていることに。
「う わ ぁ あ あ あ !!」
オレの悲鳴で割れたのか、というタイミングで、窓ガラスが割れた。
あんなに固くなっていたのに、という不思議が湧く余裕はなかったが、驚いた。
なんせ、割れただけじゃなく、割れた窓から人が入ってきたからだ。
黒いコートに、黒い幅広の帽子。
ブラックサンタの仲間なのだろうか。エルム街に出てきそうな細身のそいつは、口元に笑みを浮かべて一言、
「戻れ、蜥蜴丸」
そう言った。
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