~訪ねるもの~

11/18
前へ
/19ページ
次へ
 逃げろという思いと望みを込めて、渾身の力で弟を蹴飛ばした。  そんな、時だった。 「あいてっ」  オレは、男の腕から開放されて、袋の上に落ちた。当然、すぐに後ずさって、袋から離れる。  チャンスだ! オレは逃げるために起き上がろうとしたがしかし、そこで気づく。 「あれ……?」  オレの右腕を、まだ男の腕が握っていることに。  切断されたような男の肘から下の部分が、オレの右腕にくっついていることに。 「う わ ぁ あ あ あ !!」  オレの悲鳴で割れたのか、というタイミングで、窓ガラスが割れた。  あんなに固くなっていたのに、という不思議が湧く余裕はなかったが、驚いた。  なんせ、割れただけじゃなく、割れた窓から人が入ってきたからだ。  黒いコートに、黒い幅広の帽子。  ブラックサンタの仲間なのだろうか。エルム街に出てきそうな細身のそいつは、口元に笑みを浮かべて一言、    「戻れ、蜥蜴丸(とかげまる)」    そう言った。 ※
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加