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いつのまにか、部屋の中を刀が舞っていて、それが帽子男の手に収まった。
切断された黒サンタのひじから、黒いモヤが出ている。
血じゃない……!
胸の奥で、心臓らしきものがキュッと縮んだ気がした。
「プレゼントだ」
視界が突然真っ暗になった。
黒いコートの男が、帽子をオレの頭に無理矢理かぶせたらしい。
「うぁあ!」
すぐ、帽子を床に叩きつけた。
目を塞がれてるうちにまた袋に入れられそうになるんじゃないかと、気が気じゃなかった。
……けど、後悔した。
開けた世界で目に入ってきたのが、今まで見たことがない、おぞましい「笑顔」だったからだ。
「やっと会えたなぁ、隠し神(かくしがみ)」
凍りつくほど冷たい夜風に、長く黒い髪を流して、その男は笑っていた。
黒サンタが一歩あとずさり、倒れたドアがミシリと音を立てた。
「おやぁ? “もと神”ともあろう御方が随分な反応じゃないか。俺はヒトだ。貴様のエサだぞ?」
黒サンタが、また一歩、あとずさった。
オレはその間に、弟を近くに引き寄せ、背中に隠す。
「そのまま、動くなよ」
長髪の男が小さく、オレ達に向けて言った。
その声は少しだけ優しくて、この人が敵じゃないってことを教えてくれた気がした。
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