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「子供や女が突然消え去る怪異が、神隠し……。そして、子供や女を隠す神のことを『隠し神』という。知ってるか?」
オレと弟に背を向けて、縦一文字に刀を下ろしながら、男は質問してきた。
オレは首を横に振る。
と同時に内ももの辺りがかゆくなってきたのと、漏らしたおしっこの恥ずかしさが時間差でやって来て、いたたまれなくなる。
「元々はその名の通り、神様だったとされるが──しかし、人の味を覚えたり、悪戯に人を隠したりするために地域の人間に恐れられていた存在だ」
オレの反応を知ってか知らずか、男は続ける。
また、黒い煙が、今度は黒サンタの体から溢れ出た。
「昔は、なぁ!!」
「ひっ!」
刀を横に一振り。黒サンタの左腕が宙を飛んだ。
同時に弟が悲鳴をあげる。
「しかし、人の信仰が無くなれば、神は廃る……。隠し神の一種、叺親父。コイツも元は、夜、子供を叺という袋に入れてさらっていく神だったわけだが──」
いつの間にか、男の手にしている刀が、青白く光っていた。そして、その刃がゆっくりと、男の足元にある、黒サンタの持っていた袋へ向かう。
「廃れ、弱った神はやがて、岐路に立つ。消えるか、あるいは魔に堕ちるか……」
男は、袋に刀を突き刺した。
「喰らえ、蜥蜴丸」
すると、袋が燃え始める。
今さら、どんなマジックだろうとは思わなかった。
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