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袋は内側から青白い不気味な炎を上げて、メラメラと燃え始めたんだ。
「魔に落ちた神は、妖怪となる。人の恐怖や想いから己の形を作り、時に河童に、時に山姥に、時に鬼に、そして──」
パチパチと炎がはぜる音に混じって、袋の中から、長髪の男以外の声が聞こえ始めた。
「時に、サンタクロースになる」
声は数人分。最初は何を言っているかわからなかったが、やがて、それは悲鳴だとわかった。
何人かのけたたましい悲鳴が、青い炎に焼かれていた。
「ドイツ発祥の、黒いサンタクロースの話。日本でも都市伝説となったこの話が、叺親父を“この形”にしたんだろう……。まったくもって、迷惑極まりない話だ」
それでも男は表情を変えない。
ただ淡々と、黒サンタの解説を続けていた。
いや、当然、話が頭に入るわけもないんだけど……。
「さて、と。俺からキミらにクリスマスプレゼントをやろう」
袋が燃え尽きて悲鳴も消えた頃、男は言った。
日本刀を鞘に収め、いつの間にやら黒いモヤとなった黒サンタの体を指差して、
「二人でこれ、殴り飛ばせ」
そう言った。
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