~訪ねるもの~

16/18
前へ
/19ページ
次へ
 袋は内側から青白い不気味な炎を上げて、メラメラと燃え始めたんだ。 「魔に落ちた神は、妖怪となる。人の恐怖や想いから己の形を作り、時に河童に、時に山姥に、時に鬼に、そして──」  パチパチと炎がはぜる音に混じって、袋の中から、長髪の男以外の声が聞こえ始めた。 「時に、サンタクロースになる」  声は数人分。最初は何を言っているかわからなかったが、やがて、それは悲鳴だとわかった。  何人かのけたたましい悲鳴が、青い炎に焼かれていた。 「ドイツ発祥の、黒いサンタクロースの話。日本でも都市伝説となったこの話が、叺親父を“この形”にしたんだろう……。まったくもって、迷惑極まりない話だ」  それでも男は表情を変えない。  ただ淡々と、黒サンタの解説を続けていた。  いや、当然、話が頭に入るわけもないんだけど……。 「さて、と。俺からキミらにクリスマスプレゼントをやろう」  袋が燃え尽きて悲鳴も消えた頃、男は言った。  日本刀を鞘に収め、いつの間にやら黒いモヤとなった黒サンタの体を指差して、 「二人でこれ、殴り飛ばせ」  そう言った。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加