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短い髪の毛に、つり目の男。見覚えがあるなんてもんじゃ無い……。今日見たばかりだ。
この顔は、近所の兄ちゃんだ、今日道端でキスしてたあのカップルの片割れだ。
……けど、なんで幸せ絶頂だった兄ちゃんの生首がウチの床に転がってるんだ?
なんで、ウチの床が血みたいな赤い汁で汚れてるんだ?
なんで──。
「兄ちゃんっ、危ない!」
「ぐふっ!?」
弟の頭が、オレのみぞおちにめりこんだ。
倒れながらも痛みから反射的に弟を殴ろうとしたとき、一秒前までオレの頭があった位置を、大きな黒い手袋が素通りした。
「げほっ、な、なんだ?」
「にげて!」
この男が父さんじゃない。それはもうわかっていた。
再びオレの頭を掴もうとする手をかわし、弟に言われた通り、とりあえず起き上がって走り出す。
「トキ!!」
「オッケー!! 早くカギしめて!」
そうして、リビングの中まで逃げ込んですぐ、ドアと窓の鍵をしめた。
これで少しでも時間が稼げるはずだ。
「ちょっ、なんだよアイツ!? 今日13日の金曜日とかじゃないよな!?」
「僕そのネタわかんないから。いいからケーサツ呼んで!!」
弟は冷静だった。いや、足は震えているから、強かったというのが正しいんだろう。
恐怖の中でも足を動かして、頭を回せる強さがあった。
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