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しかし一方、兄のオレは……。
「あぁあ! だからそばの出前じゃなくて警察……え? おそば屋の北村さん? あ、すいません間違えました」
「兄ちゃんんんんんん!?」
オレは緊張やせっぱつまった状況には、極端に弱かった。
弟がいる手前、恐怖で足がすくむってことは無いけど、電話すらまともにできないくらい混乱していた。
「兄ちゃん変わって! 僕がケーサツに……」
弟に代わるまもなく、
ドン! バリバリ!! と、大きな音と共にリビングのドアがはじけ飛んだ。
「「ひっ」」
そして、倒れたドアをみしみしと踏み潰しながら、黒いサンタが部屋へ入ってくる。
そうだ。混乱して当然なんだ。父さんだと思って招き入れた男が殺人犯だなんて誰が考える!?
「窓から逃げるぞ! トキ!!」
それでも、オレには弟がいた。
守らなきゃいけない兄弟がいた。だから、頭だって回せたし、足だって動いた。
「兄ちゃんっ、開かない!」
「な、なんで!? なんで!?」
けど、状況はオレ達が動かせるようなものじゃなくなっていた。
窓の鍵が、動かないんだ。
ガラスに椅子やものを投げつけても、びくともしない。
野球のボールが当たっただけで割れたことのあるガラスが、なんでこんなに硬いんだ!?
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