~訪ねるもの~

9/18
前へ
/19ページ
次へ
 しかし一方、兄のオレは……。 「あぁあ! だからそばの出前じゃなくて警察……え? おそば屋の北村さん? あ、すいません間違えました」 「兄ちゃんんんんんん!?」  オレは緊張やせっぱつまった状況には、極端に弱かった。  弟がいる手前、恐怖で足がすくむってことは無いけど、電話すらまともにできないくらい混乱していた。 「兄ちゃん変わって! 僕がケーサツに……」  弟に代わるまもなく、  ドン! バリバリ!! と、大きな音と共にリビングのドアがはじけ飛んだ。 「「ひっ」」  そして、倒れたドアをみしみしと踏み潰しながら、黒いサンタが部屋へ入ってくる。  そうだ。混乱して当然なんだ。父さんだと思って招き入れた男が殺人犯だなんて誰が考える!?  「窓から逃げるぞ! トキ!!」  それでも、オレには弟がいた。  守らなきゃいけない兄弟がいた。だから、頭だって回せたし、足だって動いた。 「兄ちゃんっ、開かない!」 「な、なんで!? なんで!?」  けど、状況はオレ達が動かせるようなものじゃなくなっていた。  窓の鍵が、動かないんだ。  ガラスに椅子やものを投げつけても、びくともしない。  野球のボールが当たっただけで割れたことのあるガラスが、なんでこんなに硬いんだ!?
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加