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「あーあ……」
予備校帰り。
わたしは家の近くの公園のベンチに座って、ぼんやりとしていた。
秋から冬へと変わっていく季節。
夜はもう寒い。
自販機で買ったミルクティーで、手と身体を温める。
……寒いなら早く帰ればいいだけなんだけど、帰りたくない。
帰ったら、お母さんから受験の話攻めだから。
(……志望校かあ……)
浅黄女子を受ける必要性は全く見つからない。
将来の目標がないという点では、藍大も浅黄女子も同じ。
それなら、孝之くんと同じ学校がいい。
中学時代。
わたしと孝之くんと沢渡くんは、ある大きな嘘をついた。
その嘘のせいで、わたしと孝之くんは付き合っていることをずっと隠していて、高校もバラバラに受けることにした。
でもわたしは、本当は孝之くんと同じ高校に行きたかったんだ。
あのとき、出来なかったこと
今やったら駄目かな?
『もっと将来のこと、きちんと考えなさい。
もう子供じゃないんだから』
お母さんがよくヒステリックな声で言う言葉がよみがえってくる。
子供じゃない……か。
わたし、もう子供じゃ居られないのかな。
いつから大人になるのかな。
大人は、好きな人のそばにいたいという理由で、ものごとを決めたらいけないのかな。
だったら、大人になんかなりたくない。
「……はあ……寒い」
秋が終わって、冬が過ぎれば、春が来る。
でも、わたしの春はずっとずっと遠い。
そんな気がした。
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