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親父はそんなおれを見て、楽しそうに笑っている。
小説のネタにしようなんて思ってないだろうな……。
「……タケルくん、それほど自分を責めることはありませんよ。人を好きになるのは素晴らしいことです。
例え、相手に恋人がいるとしても、好意を向けられて不愉快になる人はいません。
タケルくんの恋は叶わないものかもしれませんが、その気持ちを否定することもありませんよ」
「……だけど、相手の子には『困る』って言わたけどー?」
「『困る』とは、タケルくんの気持ちが、ですか?」
「そうですよ! おれもさ、あんなタイミングで言うのが悪いんだけどさー」
……さっきおれは、柳井さんに『好きだ』と告げてしまった。
冗談ではなく、本気だと言って。
柳井さんは少しムッとしたような様子で『陸くんが好きだから、そんなこと言われたら困る』と言った。
……内心、結構ヘコんだよ。
でも、柳井さんの怒りはもっともだ。
彼氏が入院してて目を覚まさない状態。
そんなときに告白されて……ましてやおれは沢渡の友達だ。
どういうつもりなの? と言いたくもなるだろう。
だけどおれは……沢渡から君を奪いたいわけじゃない。
もちろん困らせたいわけでもない。
おれはただ、柳井さんに優しくしたい。
柳井さんが心配で、大切なんだ。
そして少しでいいから頼ってほしい。
沢渡の代わりでもいい。
ちょっとだけ、君の背負っているものをわけてほしいんだ。
そうすれば、笑ってくれるかな。
おれの好きな、本当に可愛い笑顔で。
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