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「……その子は不器用で、人に頼ることが苦手でさ。いつも一人で頑張っちゃう。大丈夫だって、まだ頑張れるって言ってさー……」
そうだ。
そんなところは柳井さんは沢渡と似ているかもしれない。
そう気づいたとき、2人がお互いを選んだ理由がわかった気がした。
きっと甘えるのが苦手な彼らが、唯一本当に心を開けるのがお互いなのだろう。
2人は惹かれあうべくして惹かれあったのかもしれない。
「……笑うと、超可愛いんだ。まあ、いつも可愛いんだけど、笑った顔が一番可愛い。
だから、いつも笑っていてほしいなー」
でも、柳井さんに一番いい笑顔をあげられるのは、おれじゃないんだろう。
それが出来るのはたったひとり。
だったら……おれに出来るのは、柳井さんと一緒にアイツを信じてやることなのかもしれない。
いつか柳井さんの隣に帰ってくることを……。
「人生って上手くいかないねー。おれ、こんなに一人の女の子を特別に思うのは初めてなんだけどなー。
どーして、他のヤツの女の子にマジになっちゃったのかな。」
「……上手くいかないから、人生は面白いんです。きっとタケルくんがその子を好きになったこと……無駄ではありませんよ」
「そうかもねー。ちょっとMだけどね」
そう言って笑ったとき、おれはほんの少し気持ちが軽くなった気がした。
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