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……そんな上手くいかない人生だけど、いいことも起こった。
沢渡の意識が戻ったのだ。
柳井さんは泣きながら喜んでいた。
そして沢渡は3学期からは学校に復活してきた。
柳井さんと沢渡は、それまで以上に2人で一緒にいるようになった。
それは、3年生になったら沢渡が転校するからだとわかったとき、何だか切なくなったけれど。
それでも、柳井さんも沢渡も幸せそうだった。
――――2月のはじめのある日。
女の子がやたらと果物を持ってきていた。
話を聞くと、今日の家庭科の調理実習でフルーツカップケーキを作るらしい。
うちの学校では家庭科は技術科との選択制。
もちろん男子が家庭科を取ってもいいし、女の子が技術科を取ってもいい。
でも何となく男子は技術、女子は家庭科に別れてしまう。
おれも選択は技術。
だからそのフルーツケーキとやらを作ることはない。
(……柳井さん、どんなケーキを作るのかなあ)
家から持ってきたらしいレモンを取り出しながら、楽しそうに白川と話す柳井さんを、ぼんやりと見つめていた。
お菓子なんかのときは女子から差し入れがあったりするときもあるし、
柳井さんのケーキなら、いくらでも食べれるかも。
……なんて、きっともらえないだろうけど。
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