女の子は、みんな……

23/30
2789人が本棚に入れています
本棚に追加
/800ページ
家庭科(男子は技術科)は3、4時間目の連続授業。 そんなわけで昼休みには、女の子たちが家庭科で作ったらしいカップケーキを交換しあったりして、楽しそうに食べていた。 幸運にもケーキをもらっている男子もいたりする。 ……うらやましすぎるよ、ちくしょう。 もちろんおれにそんな幸運が訪れることはない。 しかも廊下をブラブラ歩いていたら、宮崎先生に雑用を頼まれるというアンラッキーに出くわしてしまった。 「……はあ……」 タペストリーみたいな世界地図を1階にある文化倉庫に運ぶ。 こいつが意外に重い。 宮崎先生、こういうのは自分で運ばないと、体力のおとろえが早くなりますよー ……なんて、心の中でこっそり悪態をついてみたり。 だけど、 「お……!」 1階の廊下で、サラサラの黒い髪の後ろ姿を見つけたとき、おれのテンションは一気に上がった。 「柳井さーん!」 思わず廊下を走って彼女にかけよる。 柳井さんは、ちょっとビックリしたように身体を弾ませて、おれの方を振り向いた。 黒い髪がサラリと流れて、すごく綺麗。 「……ああ、松田くん。 そ、それどうしたの? 重そうだね」 柳井さんがおれの抱える地図を見て、クリクリした目を見開いた。 「宮崎先生のお手伝いー。先生、重いからって自分で運ばないんだもん。老化が始まったのかなー」 「ふふ……。そ、そんなこと言っちゃダメだよ」 おれの冗談に、柳井さんがクスクス笑った。 ほんわかとした気持ちになる。 そして、そんな柳井さんからはフワリと甘い匂いがした。 そう……ケーキの匂い。 柳井さんは、大切そうに小さな紙袋を持っていた。
/800ページ

最初のコメントを投稿しよう!