女の子は、みんな……

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「柳井さん、それってもしかして調理実習のケーキ?」 「え……。あ、う、うん。レモンのケーキなの」 「へえ! めずらしいねー。どんな味なの?」 あんまりレモンはケーキに使うイメージがない。 イチゴやモモならわかるけど。 「砂糖づけのレモンなの。だから結構甘くて、ケーキとの相性もいいんだよ。 陸くん、レモン好きだから……」 「あ……なるほど……」 どうやら、これから沢渡に持っていくみたいだ。 「あ、よ、良かったら、松田くんも……」 気を使っているのか、柳井さんが袋からケーキを出そうとする。 「あ、いい、いい。大丈夫大丈夫! それは沢渡にあげなよ」 そんな1から10まで沢渡のためのケーキなんてもらえない。 沢渡に悪いし、おれも寂しい。 「そ、そう……。松田くん、甘いものは苦手?」 「え? ううん、大好きだよー。クッキーとかビスケットとか。 あとさー、昔おっきいカステラに憧れた」 「も、もしかして『ぐりとぐら』? 大きいおなべで作るヤツだよね。 わ、わかる。すごくわかる……!」 「だよねー。こんなでかくてフワフワなんだよねー」 「うんうん。子供のころね、あれが食べたくて卵をたくさん割って、お母さんに怒られたことがあるの……」 楽しそうにニコニコ笑いながら話す柳井さん。 すっかり心を許してくれているみたいだった。 好きだと告げたから、もう少し気まずくなるのかと思ったりしたけれど、 柳井さんは、どうやらおれと友達として認識しているようだ。 ……きっとこれで良いんだ。 楽しくて、嬉しい。 ちょっと切ないけどね。 柳井さんは、まるで砂糖菓子みたいに甘くて、可愛い。 だけど一緒にいると、胸がチリリと痛む。 甘いだけじゃない。 それはまるで、あの唄みたいだった。 ――――女の子は何で出来ている? お砂糖とスパイスと…… そして…… .
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