はじめての、おつかい

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ケンカした。 海ちゃんとケンカした。 オレは、わるくない。 海ちゃんがわからず屋なんだ。 だって、パパがいってたもん。 ママは、おそらのうえからオレたちをみているんだって――――。 ********* 「……え、ケンカですか?」 空と海を保育園に迎えにきた陸が、驚きの声をあげる。 そんな彼に、保育士の先生が困ったような顔で答えた。 「そうなんですよ。珍しいでしょう。海ちゃんと空くん、いつも仲が良いのに」 先生の右隣には空。 そして反対の左隣に海。 2人ともムスッとした顔をして、お互いを見ようとはしない。 「……海、空。どうしてケンカしたんだ?」 陸はかがんで、2人に目線を合わせた。 「……だって……」 唇をすぼめて、うなるように空がつぶやく。 「だって、海ちゃんがウソツキなんだもん!」 「……え?」 思わぬ答えに、陸はギョッとする。 すると海が今までそらしていた顔を、キッと空の方に向けた。 「ちがうもん! ウソツキは空ちゃんだもん!」 「ちがう! 海ちゃんだよ!!」 「空ちゃんのバカ!」 「海ちゃんは、もっとバカ!」 「バカっていうほうがバカ!」 「じゃあ海ちゃんがバカだー!」 「……いい加減にしろ!!」 2人の言い争いにたまりかねた陸が一喝する。 するとピタリとケンカは止まった。 陸はため息をついてから、先生に向き合う。 「……なにがあったんですか?」 陸の問いに、先生は少し気まずそうに微笑んだ。
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