はじめての、おつかい

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「……空や海がそんなふうに思っていたなんて。 母さんが亡くなって、やっぱり色々とつらい思いをさせていたんだ。……んっ……」 陸が悲しそうに目を伏せる。 そして軽く咳き込んだ。 「陸、風邪ひいたんじゃないか?」 「いや、大丈夫だと思う」 そう言いながらも、陸の目はトロンとしていて、明らかに疲れているみたいだった。 「今日はもう寝たらどうだ? 海と空も寝てるしさ。 2人のことは心配しなくていいよ。案外、明日になったらケロッと仲直りしてるかもしれないよー」 「……う……ん」 「母さんのことはさ、確かに2人とっては難しい問題かもしれない。だけど、遅かれ早かれ2人はそのことで悩んだり、寂しがったりすることが出てくるんだ。 俺たちに出来るのは、そのときにしっかりと2人のことを受け止めてやることだと思う。 だから陸、そんな顔をしないで。お前が悲しんでると、海と空がもっと寂しい気持ちになるからさ」 「父さん……」 「今日は寝なさい。あとの家事は俺がやっておくから。 お前も高校生活が始まったばかりで疲れているんだよ。たまにはゆっくり休みなさい」 「……わかった」 陸は弱々しく微笑んで、部屋に戻っていった。 父は残ったビールを飲み干すと、ふう……と大きく息を吐く。 「……まだ責任を感じているんだな。若菜のこと……」 そうつぶやいて、目を閉じる。 「……若菜。俺は、何て言ってあげればいいのかな……」 その問い掛けに答える者はいなかった。 .
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