さよなら、ピーターパン

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小さいころから、ままごととか、女の子のする遊びはあまり好きじゃなかった。 それより、外で走り回った方が楽しい。 おにごっことか、缶けりとか、探偵ごっことか。 小学校に入ってからは、野球、バスケ、サッカー…… 一部の女子からは『透子ちゃんって、男の子としか遊ばないんだね。男の子が好きなんだね』なんて嫌味を言われたりしたけれど それでも、わたしの興味はいつでも男の子みたいだった。 髪もすごく短くて、いつもズボンでスカートなんて持ってなくて、 男の子に間違われることも珍しくなかったくらいだ。 そんな中、特に夢中になったのはサッカー。 地域のチームにも入って、試合に出たりもした。 自分で言うのもなんだけど、上手かったのだ。 このままずっとサッカーを続けて、ゆくゆくはプロになって…… そんなことを本気で夢見ていた。 だけど、現実。 中学に入学したわたしは、制服がセーラー服ということで、毎日スカートをはくようになった。 そして、中学の部活に女子サッカーはなくて、男子サッカー部ではマネージャーにしかなれなくて。 わたしの夢は、段々と色褪せて、叶わないものになってしまった。 でも……そんなわたしは恋をした。 わたしと同じようにサッカーの好きな男の子に。 ずっとずっとサッカーをしたいって夢見ている男の子に。 彼の夢にわたしの夢を合わせて、 彼の夢を応援したいと思った。 わたしは、自分の夢を彼に託したのだ。 気づけば、わたしの髪はすっかり伸びて、誰も男の子に間違えたりはしなくなっていた。
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