2789人が本棚に入れています
本棚に追加
**********
「とーこ、こっちこっち」
放課後。
いつものファミレス、孝之くんはすでに席でわたしを待っていてくれた。
「孝之くん、ごめんね。待った?」
「いーや。今、来たとこ」
「そっか。よかった」
孝之くんの向かいに座り、ホッと息を吐く。
ウェイトレスさんが、すぐにお冷やを持ってきてくれた。
わたしは大好きなチョコレートサンデーを注文して、孝之くんに向き直る。
「孝之くん、今日は短縮だったの?」
「ああ。あとは自習室で問題集やってた」
「そっか」
「とーこのとこは、普通に授業だよな」
「うん。うちは卒業ギリギリまで通常授業だよっ。自習になるのもあるけどね」
わたしたちは3年生。
受験本番が控えているということもあって、授業は短縮だったり、自習が増えたり、もう少ししたら自由登校になる学校も多い。
わたしの学校は、しっかり授業があったりするけど。
とにもかくにも、そんな状況。
わたしたちの話題も、自然と受験のことが中心になる。
「とーこ、この前の模試どーだった?」
「あ、うん。悪くなかったよ、ほら」
わたしは結果の紙を、孝之くんに渡した。
「あ、本当だ。藍大、A判定じゃん。良かったな」
「……うん」
藍大は、藍宮大学の通称。
体育学部が有名で、孝之くんの第一志望。
そして、わたしもそこを目指している。
もっとも、わたしは体育学部を受けるわけでなく、文学部にしようかと思っているのだけど。
……でも……
なんとなく文学部を選んではいるものの、わたし別に国語が大好きってわけでもないんだよね。
「……あれ? とーこ、浅黄女子も受けるのか?」
「あ! ……それは、お母さんが受けろってしつこいから、一応志望に書いただけ。
判定Cだし。わたしは受ける気ないよっ」
最初のコメントを投稿しよう!