さよなら、ピーターパン

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********** 「とーこ、こっちこっち」 放課後。 いつものファミレス、孝之くんはすでに席でわたしを待っていてくれた。 「孝之くん、ごめんね。待った?」 「いーや。今、来たとこ」 「そっか。よかった」 孝之くんの向かいに座り、ホッと息を吐く。 ウェイトレスさんが、すぐにお冷やを持ってきてくれた。 わたしは大好きなチョコレートサンデーを注文して、孝之くんに向き直る。 「孝之くん、今日は短縮だったの?」 「ああ。あとは自習室で問題集やってた」 「そっか」 「とーこのとこは、普通に授業だよな」 「うん。うちは卒業ギリギリまで通常授業だよっ。自習になるのもあるけどね」 わたしたちは3年生。 受験本番が控えているということもあって、授業は短縮だったり、自習が増えたり、もう少ししたら自由登校になる学校も多い。 わたしの学校は、しっかり授業があったりするけど。 とにもかくにも、そんな状況。 わたしたちの話題も、自然と受験のことが中心になる。 「とーこ、この前の模試どーだった?」 「あ、うん。悪くなかったよ、ほら」 わたしは結果の紙を、孝之くんに渡した。 「あ、本当だ。藍大、A判定じゃん。良かったな」 「……うん」 藍大は、藍宮大学の通称。 体育学部が有名で、孝之くんの第一志望。 そして、わたしもそこを目指している。 もっとも、わたしは体育学部を受けるわけでなく、文学部にしようかと思っているのだけど。 ……でも…… なんとなく文学部を選んではいるものの、わたし別に国語が大好きってわけでもないんだよね。 「……あれ? とーこ、浅黄女子も受けるのか?」 「あ! ……それは、お母さんが受けろってしつこいから、一応志望に書いただけ。 判定Cだし。わたしは受ける気ないよっ」
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