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浅黄女子は、そこそこ名の通った名門校だ。
ずーっと教育ママをやっているうちのお母さんは、体育学部に特化した藍大をわたしが第一志望にしていることが不満らしく、しつこく浅黄女子にしろと言ってくる。
『藍大に行ってどうするの?
特に目標がないなら、ちょっとでも偏差値の高いところを目指しなさい。
学費だってタダじゃないのよ?
いい大学に行った方が、就職だって有利に決まってるんだから』
最近はいつもこれ。
耳に痛いところもある。
わたしに明確な目標なんてない。
ただ、好きな人と同じ大学に行きたいだけ。
でもそれは、いけないことだろうか?
「……とーこ、本当に藍大でいいのか?」
「え?」
「ほら、おれ達、一緒の大学に行こうとは言ったけどさ。
もしも、とーこに行きたいとことか他にあるなら、無理におれに合わせなくていいんだぜ?」
「……なに、それ? 孝之くん、わたしが藍大受けるの反対なのっ?」
「いや、だから……」
「わたしは無理してないっ」
「……それならいいけど……」
「…………」
わたし達に気まずい沈黙が生まれる。
丁度そのタイミングでウェイトレスさんがチョコレートサンデーを運んできた。
わたしはそれを黙々と食べて、器が空になったところで『予備校があるから』と、孝之くんを置いてファミレスを出ていった。
大人げないことをしているとわかってはいたけれど。
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