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そんなとき、
「ねーねー、柳井さん。ちょっといい?」
高橋と鈴木がスケッチブックみたいなものを持って、柳井さんに話しかけてきた。
お団子頭で美人系の高橋と、個性的なボブカットの童顔な鈴木。
タイプは違うけど、2人とも同じファッション部所属で仲が良い。
この劇では、確か衣装係をやることになったはずだ。
「衣装のことなんだけど、資料を参考にデザインしてみたの。チロリアンテープとかを使って、シンプルだけど可愛い感じに……」
どうやら衣装のデザインを、柳井さんに相談に来たみたいだ。
柳井さんは真剣な表情でそれを聞いている。
おれもこっそりデザインを覗きこむ。
いかにもヨーロッパって感じのエプロンドレスだった。
「へー、可愛いじゃーん。いいんじゃね?」
「松田には聞いてないし」
高橋から冷たく一蹴されてしまう。
可愛くねえヤツ! 美人だけど!
「……うん。わ、私もこんなデザインでいいと思う」
柳井さんが控えめに高橋に笑いかけた。
「で、でも、ブラウスの色は白じゃなくて、薄いブルーにしてもらってもいいかな。
白だと照明が当たると黄色っぽくなっちゃうの。逆に薄いブルーだとね、照明で丁度いい白に見えるようになるから。
あ、あと黒もやめて……。暗幕にとけこんじゃうから。紺色にしてもらってもいい?」
「あ、うん。わかった。気を付けるよ」
高橋と鈴木はうなずくと、自分たちの持ち場に帰っていった。
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