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思わぬ返事に驚いて、一瞬止まってしまう。
すると柳井さんは、困ったように首をかしげた。
「あ、あれ……? 違ったかな」
「いや。ううん、違わないよ。ただ知ってると思わなかったからビックリしただけで」
おれがそう言うと、柳井さんは顔をほころばせる。
花が咲くみたいな、可愛い笑顔だった。
「小さいころね、家にあったのマザーグースの本。結構残酷だったり、特徴的な唄が多いから。それで覚えてるのかな。
……女の子は何で出来てるの?
お砂糖とスパイス
素敵な何か
そんなもので出来てるよ
……だったよね」
「……う、うん」
おれはぼんやりとしたまま、うなずいた。
驚いた。
柳井さんがそれを知っていたことも。
そして、こんな風に可愛く笑うんだってことも。
「そ、それに……ビックリしたのは私の方だよ。だって男の子って、あんまりマザーグースとか知らないって思ってたから。
ま、松田くんって、もしかして本とか好きなの?」
「うん! まあね。こう見えて、かなり色々読んでるよ。
純文学、童話、果てはラノベまで何でも来い!」
わざとおどけた感じで親指をグッと立てると、柳井さんの顔がパアッと明るくなった。
「本当!? わ、私もね……本、大好きなの。
ま、松田くんは今どんな本にハマってるの?」
「え? うーんと、そうだなあ。
……たとえばあ………」
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