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「そうだよね。私もあそこはドキドキしちゃって」
「そうそう! そんでさ、あの表現が泣かせるんだよなー」
「わかるよ。本当に綺麗な言葉だよね」
………あれから。
おれと柳井さんは、すっかり本の話題で盛り上がってしまった。
偶然にも、おれの気に入っている小説は柳井さんもハマっていることが多く、いくら話しても尽きないのだ。
本の話をしているときの柳井さんは生き生きしている。
声もいつもの消え入りそうなそれとは違って、ハッキリとしているし、
何よりも瞳がキラキラと輝いていて、とても魅力的だった。
いつもはうつむきがちな顔を上げている柳井さん。
こうしてマトモに顔を見るのは初めてかもしれない。
大きい黒目の瞳がクリクリしていて、すごくあどけない。
日本人形みたいに黒くて真っ直ぐな髪。
上手く言えないけど、萌え系と清純系のちょうど中間って感じがする。
つまり……すごく可愛い。
柳井さんって、こんなに可愛い顔してたんだな。
地味で目立たないから、全然気づかなかった。
柳井さんと本の話で盛り上がりながら、彼女の顔を見つめる。
楽しそうにコロコロ変わる表情は、見ていて全然飽きない。
――結局、6時間目が終わってもおれ達の話は尽きなかった。
「ゴメンね、柳井さん。なんか本の話をしすぎて、あんまり音響決まらなかったかもー」
「え、そんな。気にしないで。松田くん、すごく音楽のセンスがいいと思うよ。
それに、私すごく楽しかった。また、良かったら話をしようね……」
そう言って柳井さんが小首をかしげて笑ったとき、おれの心臓はトクンと跳ねた。
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