女の子は、みんな……

11/30

2789人が本棚に入れています
本棚に追加
/800ページ
「そうだよね。私もあそこはドキドキしちゃって」 「そうそう! そんでさ、あの表現が泣かせるんだよなー」 「わかるよ。本当に綺麗な言葉だよね」 ………あれから。 おれと柳井さんは、すっかり本の話題で盛り上がってしまった。 偶然にも、おれの気に入っている小説は柳井さんもハマっていることが多く、いくら話しても尽きないのだ。 本の話をしているときの柳井さんは生き生きしている。 声もいつもの消え入りそうなそれとは違って、ハッキリとしているし、 何よりも瞳がキラキラと輝いていて、とても魅力的だった。 いつもはうつむきがちな顔を上げている柳井さん。 こうしてマトモに顔を見るのは初めてかもしれない。 大きい黒目の瞳がクリクリしていて、すごくあどけない。 日本人形みたいに黒くて真っ直ぐな髪。 上手く言えないけど、萌え系と清純系のちょうど中間って感じがする。 つまり……すごく可愛い。 柳井さんって、こんなに可愛い顔してたんだな。 地味で目立たないから、全然気づかなかった。 柳井さんと本の話で盛り上がりながら、彼女の顔を見つめる。 楽しそうにコロコロ変わる表情は、見ていて全然飽きない。 ――結局、6時間目が終わってもおれ達の話は尽きなかった。 「ゴメンね、柳井さん。なんか本の話をしすぎて、あんまり音響決まらなかったかもー」 「え、そんな。気にしないで。松田くん、すごく音楽のセンスがいいと思うよ。 それに、私すごく楽しかった。また、良かったら話をしようね……」 そう言って柳井さんが小首をかしげて笑ったとき、おれの心臓はトクンと跳ねた。
/800ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2789人が本棚に入れています
本棚に追加