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柳井さんは可愛い。
話していると、かなり面白くて楽しい。
本に詳しいところも、すごくいいと思う。
……もしかしたら、好きになりかけているのかもしれない。
でも今は、それを素直には言えない。
言っちゃいけない。
少なくとも沢渡に対しては。
「……そんなんじゃねーよ! 可愛いなーとは思うけど、好きとかじゃねーから」
……そのとき、おれは初めて思っていることと違うことを言った。
自分でも驚いた。
おれって結構、嘘が上手いじゃん?
沢渡は納得したのか、ほんの少し表情がゆるんだ。
だけど、その目はまだ不安げに揺らめいていて、
なぜかおれは罪悪感を感じてしまった。
変なの。
別に柳井さんは、沢渡の彼女ってわけじゃねーのに。
なんでこっちが苦しくならないといけないわけ?
おれの心に、複雑な感情がたまっていく。
その中心にいるのは、きっと柳井さん。
それはまるで砂糖のように甘くて、
スパイスのように、痛いくらいの刺激を与えるのだ。
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