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それから……
音響で一緒ということもあって、柳井さんとたくさん話すようになった。
おかげで音響の仕事が楽しい。
柳井さんは思っていたよりもよく笑う。
それに、声は小さいけれど楽しそうにしゃべる。
大人しいイメージしかなかったから、そんなギャップが意外で面白い。
色々な一面が見つけられて嬉しい。
もっともっと知りたいと思ってしまうんだ。
だからかな、
一緒にいないときでも、気がついたら探していたりする。
頑張りすぎだな、無理してないかな。
何か落ちこんでるみたいだ。嫌なことあったのかな。
ああ、やっぱり笑ってる顔が一番可愛いな。
……なんて、知らないうちに見つめてしまったり。
そうしている内に、あることに気づいた。
おれが柳井さんを探してしまうように、柳井さんは……沢渡のことを探している。
柳井さんがこっちを見てる!?
なんてドキドキしても、それは大ハズレ。
おれじゃなくて、一緒にいる沢渡のことを見ているんだ。
その度に、おれはちょっと寂しくなる。
そんなこと慣れっこのはずなのにさ。
沢渡と目が合うと、柳井さんは本当に嬉しそうに笑う。
その笑顔が一番可愛い。いつもそうやって笑っていてほしい。
……その先にいるのが、おれじゃないとしても。
だって可愛い女の子は、可愛く笑ってるべきだよね。
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