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つついても擽っても中々起きないサクをベッドから転がり落とす。
怒られるかな、と様子を伺うがそんな様子は少しもない。
というか、サクがこっちを見ようとしない。
「サク…?」
「…なんだ」
そっと顔を覗き込めばあからさまに反らされた。
さらに近づく俺から逃げる様にして、ガタガタとこれまた不自然に立ち上がり、いそいそと着替える。
…おかしい。
「…サク、なんか隠してる?」
ぽつりと呟く様に言えば、サクの肩が微かに跳ねた。
「……なんのことだ」
口調は相変わらずだが、この起床からの様々な動揺が全てを物語っている。
しかし、聞き出したいという気持ちもあるのだが毎度の如く面倒くさいという気持ちが勝ってしまい、聞き出しよりも先に今現在も封の解かれていない箱に意識は戻った。
「これ、開けてもいい…?」
リボンの先に触れながらサクに問えば、ほっとした表情と共に「…ああ」と何時もより優しげな返事が返ってきた。
(…変なの)
やっぱり、何か隠してるよなぁ…なんて思いながらリボンを解く。
絹の様に滑らかなそれは、殆んど力をいれなくても自然と綻んだ。
箱をそっと開く。
「わ…」
シャラリと細く繊細な造りのシルバーチェーンの先につく小さな小さな陽種。まだ光を湛えていないそれは透明な硝子玉で。
アクセサリーとしてつけるだろうそれを、さっそく首に下げる。
女子のようにはしゃいだりはしないが、なんだかとても照れ臭い。
そっと指先で陽種に触れながらサクを見れば、なぜかサクが俺以上に幸せそうな、柔らかな表情で此方を見ていた。
「…おいで」
「…?」
柔らかな表情のまま俺を呼ぶサクの元へ行く。
はてな、と首を傾げてサクを見上げれば、サクは静かに手を上げペンダントに手をかざした。
「…!」
ふい、とサクの手がかざされた瞬間、ぽう…と陽種が光りだした。
塔の上にある陽種よりもずっと小さなそれは大きな陽種と同じように美しい光を湛えてキラキラと光る。
そして、ポカポカと微かに熱を放っていた。
「…暖かい」
「ああ…、お前が凍えないようにな」
ゆるりと俺の頭を撫でるサクの手が嬉しくて、微かに擦り寄る。
ふ、とサクが笑ったような気がした。
「…ありがと、嬉しい」
「…ああ」
しばらくの間サクに頭を撫でられたまま、ゆるゆるとした時間を過ごし、いつの間にか俺はサクの腕のなかで夢の世界へと旅立っていた。
そんなクリスマスの一ページ。
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