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俺は別に今の生活に不満があるわけじゃない。
いつもの時間に電車に乗って、訳分かんない勉強をして、変わらない仲間とだべって、いつもの電車に乗る。
適当に時間を潰して、飯食って風呂入って寝る。
そんな変わらない毎日を、特に何とも思わず過ごしてきた。
そりゃ多少は何か変化があったりするけど基本は同じだ。
それでも俺は、今の生活でもいい。
平凡で平和で、平穏な毎日が好きだ。
だけど、でも。
それだけでいいのかと言われればそんな訳ない。
ちょっとした刺激も欲しかった。
そして俺は見つけた。
放課後、いつもの電車に乗り、いつもの道を歩いていた時に見つけた。
いかにも怪しい、茶色の旅行カバンを。
「…………」
開けてしまった。
いや考えたよ、考えたけど考えた末の結果だよ。
だから――ごめんなさい。
でもまだ中身を見てはいない。
幸い周りに人はいないし(だから開けた)今見たってすぐ閉めて帰ればそれで済むだろ。
だから覗きました。
中には一万円札が一枚だけ入っていた。
ぽつりと。
「――――」
周囲を確認する俺。
そして周りに誰もいないことを確かめ、旅行カバンの中から一万円札を取り出し、その場を後にした。
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