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「死体を機攻に組み込む? 馬鹿ですか!?」
厄介な壁、理解を得る事は
何よりも厳しい。
私が師として教えてきた
彼女すら理解者には適合しない。
「正気だ。狂気の沙汰とは思うがね」
そうだ、
私は禁忌に触れんとしている。
「Dr、貴方は鬼畜です!! 確かに脳は魅力的で未知なCPUともなるでしょう。しかし人を殺す兵器を造る者が、その死者をだなんて……冒涜ですよ」
死体を機攻に組み込む、
つまりは死体を
兵器の媒介へと変える。
それが私の開発中の兵器。
彼女に対しては、
無駄な建前を貫こう。
彼女は、手を汚すべきでは無い。
「あぁ、だが死んだまま、想い遂げぬまま散った無念を晴らす機会を与えたいんだ」
「それは神の仕事です!! 貴方は人だ、人道に背を背けるべきでは無い!!」
神……無神論者ではあるが、
何かしら込み上げるものを
感じさせるワードだ。
しかし、
振り返るわけにはいかない。
「残念だが私は、人である以前に科学者なのだ。すまないな」
「…………私は、降ります」
そうだ、降りてくれ。
君を巻き込みたくはない。
その澄んだ瞳を返り血に
濡らして欲しくは無い。
その目尻に溜めた涙を
忘れてほしくは無い。
「良いだろう。だが、この艦からも降りて貰う」
「道を踏み外すよりはマシです。さようなら」
最後は呆気ないものだ。
乱暴に閉められた部屋の戸を
見詰める事しか出来なかった。
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