零落のプレリュード

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――私は部屋を飛び出した。 あの人は狂っている。 そんな兵器が生まれたら、 それを造る為に人は殺される。 脳の持つ力は未知数。 しかし、 それが人智を凌駕するのは明白。 彼は目先の餌に釣られている。 義手や義体とは訳が違う。 目覚めたら 自分が兵器になっていた、 なんてのを戦死者が見たら…… 死体に自我が有るかは知らないが それこそ冒涜だ。 皮肉では済まない。 勝手に手を汚されるだなんて、 冤罪でも無く真の罪を。 義体工学者だったはずの彼、 何故彼が軍需に手を出した? 義肺、義性器、義心臓…… 人に足り無い物は山ほどある。 万能細胞が主流となったが、 市場は一部の医療企業が独占、 細胞には不適合者も存在する。 艦の医療ドックの脇を抜け、 デッキへと踏み出す。 眼下を行き来する 搬入業者が目に入った。 彼等が運んだ物質が、 非人道的な研究を助長する…… そう思うと胸が痛む。
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