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「ああぁあぁあああ!!」
昼休みの教室から悲痛な叫びが廊下まで響き渡った。
それは教室の窓際。
3人の男子生徒が一つの机に集まって昼食を取っていた中、一際小さな生徒が肩を震わせて椅子から立ち上がって涙目で箸を握りしめていた。
「てめぇトモ! 俺の唐揚げ食うなよ! 楽しみに取っといたのに!」
一際小さな彼、楠木素直(クスノキ スナオ)
「ゴメンね、ナオ君。唐揚げが俺を呼んでたから、つい」
素直の怒声を飄々と交わす、小林斗望(コバヤシ トモ)
「……」
2人に挟まれ一人黙々と購買のサンドイッチを食べてるクールな彼、夏川竜(ナツカワ リュウ)
大体の学校生活を3人で過ごす、仲の良いクラスメイト。
容姿の整った彼らは、入学して数ヶ月で学校内では最早名物とも言える存在だった。
「ナオ君。次から好きなものは最初に食べるようにしなよ」
「ざけんな! 俺は好物を最後に食べて食事を締めるんだよ!」
「アハハ。何それ」
「お前! 悪いと思ってねーだろ!!」
「思ってる思ってる。ゴメンねー」
「てめぇぇ……!!」
「ナオ」
「なに……っむぐ?!」
怒りで握り拳を震わせる素直に、ずっと黙って見ていた竜がカツサンドを口に突っ込んだ。
突然のことに素直は黙ってモグモグとサンドイッチを食い終わると、さっきまでの怒りが薄らいだのか途端に大人しくなった。
「飯くらい静かに食え」
「……美味い」
「ハハッ。さすがリュウ君だねー」
「トモ……お前もナオをからかうなよ」
「だってナオ君ってからかいがいがあるからつい」
「つい、じゃねーよ!!」
「ナオ」
「……はい」
「アハハ! 本当に2人は仲良いよね、もう昔ながらの知り合いって感じ?」
「そうか?」
「リュウと会ってからまだ一ヶ月しか経ってねーけどな」
「でも寮が同室なんでしょ? 24時間ベッタリだね」
「ベッタリいうな!」
「じゃあ、まったり」
「意味わかんねーよ!」
それは一ヶ月前。
この高校に入学した時のこと。
その頃の素直と竜は対象的で、言い表すなら光と影だった。
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