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それは、とある四月。
真新しい制服を身に纏い、彩戯学園の高等部へ入学した時のこと。
内部生だった素直は制服とが変わったくらいで特に代わり映えのない気持ちで高等部の校舎に足を踏み入れた。
入学式を終えて、友達と一緒に教室に入った素直は真ん中の席に目を奪われた。
その周囲だけ空気が違うような、何となく張り詰めた雰囲気を感じられた。
一目を惹く金色の髪と切れ長の碧眼は、明らかに浮いていた。
孤立した雰囲気の中、彼はそんなこと気にならないというように腕を組んで、ただ呆然としている。
「なぁ、あいつ誰?」
素直は友達にコソッと聞いた。
小さく指で彼の方へ視線を促すと、友達は一瞬だけ嫌そうな顔をして見せた。
「あれ……確か夏川竜だよ。聞いたことないか? 隣町の中学でやたら目立つ奴がいるって。噂には聞いてたけど本当に彩戯に入学してきたのか……」
「噂……うわさ……あるような……ないような?」
「俺も噂でしか知らないけど、何かスゲー喧嘩が強いとか危ないことに手ぇ出してるとか…まぁ悪い噂が尽きないんだってさ」
「へー」
「あの容姿だからな。女にも困らないみたいで来るもの拒まずで、いかがわしい場所でよく見掛けるらしいぞ」
「ふぅん……」
黙ってても人が集まってくる素直とは対照的に誰も寄せ付けない雰囲気。
それなのに何故か引き寄せられるような魅力があって、素直は自然と足が進んだ。
後ろから聞こえる友達の制止を聞き流し、机を挟んで竜の前に立った。
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