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少年は砂浜に足を捕られながら歩き続けた。
真夜中の海。
真っ暗で終わりが見えない海。
どうして自分が此処にいて、何故こんな場所を歩いているのかも解らないまま少年は歩き続ける。
何も解らない。
何故、どうして
いくら考えても解らない。
何かを探していたような気がしたのに、それすら忘れてしまった。
「……っ」
ドサッ
少年は蹴躓いて倒れてしまった。
波打ち際。押し寄せる波が少年を濡らしていく。
起き上がる気力もない。
波の音を直に感じながら、少年は眼を閉じる。
もう何も解らない。
だったら、もう何も考えない。
忘れてしまった。
いや、失ってしまった。
残されたのは、存在だけ。
名前も記憶も、もう解らない。
少年は心の中で誰かと決別した。
(さよなら、さよなら……)
(さよなら……『 』……)
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