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「イチ、あなたの弟よ」
俺が5歳の時、稜哉は生まれた。
「おとーと?」
「そう。今日からイチはお兄ちゃんだから、リョウヤのことしっかり守ってあげてね」
そう言って母さんは腕の中で抱いてる稜哉の顔を俺に向けた。
そしたら稜哉は嬉しそうな顔で必死に手を伸ばして、俺の手を掴んだんだ。
あの頃小さかった俺の手よりもっと小さな手が可愛くて、愛おしくて……
「りょうや」
俺が守ってやらなきゃって、そう思ったんだ。
それなのに
「待ってイチ兄」
「……」
「イチ兄ってば」
「うっせーな聞こえてるよ!」
兄、城井 壱-シライ イチ-(20)
身長152㎝
弟、城井 稜哉-シライ リョウヤ-(15)
身長170㎝
あれから15年。
弟との頭一つ分は違う身長差に、兄は深い溜め息を吐いた。
何が悲しくて二十歳にもなって弟より身長が低くなければいけないのか。
嘆かずにはいられない。
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