16人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「ったく……なんでお前ばかりニョキニョキ伸びてんだよ……」
「俺、まだ成長期だから伸びるよ」
これでは兄の威厳はまるで無い。
何より悲しいのは壱が稜哉を好きだからこそ、やるせない気持ちでいっぱいなのだ。
稜哉が生まれてから、共働きで忙しい親の代わりにイチが弟の面倒を見ていた。
その頃から壱は稜哉が一番大切で、その気持ちはいつからか恋に変わっていた。
ずっと弟は自分が守ると思っていたのに、稜哉は中学に入ってからグングン成長していき、中3になった今、成長が止まってしまった壱よりデカくなってしまった。
「くそーなんだよ成長期って……なんでリョウヤばっか……同じメシ食ってきたってのに……」
「ん~……遺伝?」
「同じ遺伝子継いでるはずなんですけど……?!」
毎朝溜め息を吐いて登校する毎日。
2人は彩戯学園の施設内に入り、それぞれの学生棟へ別れた。
壱は大学練へ。稜哉は中学練へ。
「じゃあイチ兄、またお昼にね」
「ん」
稜哉の背中を見送り、壱も校舎へ向かう。
なんで弟なんか好きになったのだろうと、少し後悔しながら。
.
最初のコメントを投稿しよう!