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木々が色褪せて葉を落とした冬の日。
一番後ろの窓際の席で青年は頬杖をついて空を眺めていた。
彼、箕波透把(ミナミ トウワ)。
高校に入って、初めて迎える冬。
何事にも関心を持たない彼は、何を思うでもなく、ただ空を見ていた。
特に好きなこともない。
執着もない。愛着もない。
無気力、無関心、かつ無表情。
透把はただ流れる時間に身を任せて生きてきた。
「おーす、透把」
「……うす」
そんな透把に声を掛けてきたのは幼なじみの菅谷翔太(スガヤ ショウタ)。
透把と反して明るく元気が取り柄。
翔太は声を掛けたのにも関わらず目も合わせない透把の前の席に座り、真似て空を見上げた。
「何かあんのか?」
「何も」
「んー……今年は雪、降るらしいぜ?」
「雪、か……」
小さく呟いて、小さく溜め息をついた。
透把は雪が苦手だった。
何故かは解らない。
でも、冬がどうしようもなく嫌いだった。
暖房が利いた教室で、ほんの少し寒い窓際の席。
透把はいつか降るかもしれない雪に、もう一度溜め息をついた。
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