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「これは結び柳ある」
「むすび…やなぎ?」
「そうある。
人と人が別れるとき、輪の様に廻り廻ってまた会える事を誓って作るものあるよ」
「そうなんですか。
でも、なぜ私と…?」
私がそう尋ねると、彼は満面の笑みを浮かべた。
「菊は我の大事な弟あるね。
だから、菊がどこに行っても我の所に戻って来れる様にこれを作ったあるよ」
―――――
(そんなこともありましたね…)
青い柳の葉に触れ、菊は改めて出来事を振り返っていた。
(結果、私は貴方に刃を向けてしまった…)
柳の樹から離れ、真っ直ぐ縁側へと戻る。
その手前。
ゆっくりと菊は夜空を見上げた。
昔見たままの景色と輝き。
「…ええ。
本当に綺麗な月ですね…耀さん」
思い出された記憶に答えを返し、菊は寝所へと踵を返す。
(過ちを犯した私ですが…。
貴方はまだ私を、
弟と呼んでくれるのでしょうかね…?)
end
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