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真っ白な世界の中。
気が付けば少し離れた場所に小さな子供が泣いていた。
近寄ってみればそれは昔の、まだ小さかった頃の俺。
ふらふらと何かを探すように歩いては立ち止まり、うずくまっては涙を流している。
涙の理由は、きっとあの子、なんだよね。この頃の俺はあの子が一番の存在だったんだから。
「しん、せ…ロー、マ…」
…ほら、ね。
―世界がぐるりと反転して白い世界から見晴らしの良い丘へと変わった。
逢えない事を理解していても、その姿を、思い出を追って、小さい俺はいつもこの丘に足を運んでいた。
ほら、今も泣き腫らした両目を擦りながら、遠くを見つめてさ。
何だかその姿がいたたまれなくて、俺は無意識のうちに幼い自分へと歩みを進めていた。
「―!神聖ロー…」
あと数歩というところで、小さな俺は嬉しそうに振り返った。でも俺の姿を見た瞬間にその嬉しそうな顔はすうっと消えていく。
「誰…ですか?」
恐怖心と警戒心が入り交じったような表情を浮かべながら、小さな俺は問い掛ける。
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