帰れ

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これは、ある休みの日中に起きた話です。 私は部屋でレンタルしてきたDVDを観ていたのです。 キリのいい所で止めてトイレに行こうと考えていました。 「タンタンタンタンタン」 階段を降りてくる音、娘の 「お母さん洗濯終わった?」 と会話が耳に触ります。 DVDを一時停止した私は、部屋を出ました。 そして、用を済ませ飲み物を取りに台所へ。 1本のペットボトルを手にした時です。 我が家に人の気配がしない事に気付きました。 「あれ?さっき洗濯がどうとか・・・。」 独り言を言いながら辺りを見たのですが、誰も居ないのです。 妻、娘、息子と名前を呼びましたがシーンとした空気が奇妙で玄関へ行くと、皆の普段履いている靴もサンダルもあるのです。 「やっぱり居るんだ。」 この奇怪な出来事に自分で勝手に終止符を打ち、部屋へと戻ると先程一時停止したはずのビデオのエンドロールが始まっていて 「あれ?押し間違えたか・・・。」 と再度チャプターから観ていました。 そして1時間も経った頃でしょうか、部屋のドアを開けると家の中は真っ暗でやはり誰も居ないのです。 また、家族の名前を呼ぶのですが返事の無い事に気味悪さを感じ、家から出ようとした時でした。 亡くなった母が玄関に立ったいたのです。 「帰れ。こっち来るな、帰れ。」 手で追い払うように言っていた事に驚いた瞬間 「ちょっと、お父さんどうしたの?大丈夫?」 妻に身体を揺すられ眼を開けると、やはり家族は家に居たそうです。 どうやら、私は暑さと貧血からくる目眩で倒れ頭を打ったようでした。 幸い少しの出血と打撲で済みましたが、本当にあの時家族が留守だったら私は今頃・・・。 亡くなった母の「帰れ」という言葉は、やはり現世に帰れという事だったのでしょうか。
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