新築の事故物件

3/3
1748人が本棚に入れています
本棚に追加
/477ページ
私は旦那さんの肩をつつき 「もう他の人って来てる?」 「職場の人間はまだだから、今は全員で8人ですよ。」 「だよね・・・。」 「何かありました?」 「いや、気のせいだよ。」 さすがにせっかくこの家を購入した本人に気味の悪い話等は出来ずに私は帰宅しました。 それから1ヶ月程してから 「家に来てほしい。」 と親戚の女性から電話があり仕事帰りに立ち寄りました。 なんと彼女らは(旦那さんは不在だった)この家を売る事にしたと言うのです。 理由を聞くと実に不可解でした。 夜中、1階の台所で音がするので行ってみると冷蔵庫が開いていたり、寝ていても視線を感じたり、階段を何者かが歩くような音がするというのです。 「とても気味悪くて落ち着かないし、子供を産んでからも心配で。」 と言うその顔は少し痩けたようでした。 やはり私が聞いたあの足音は気のせいではなかったのです。 2人を不憫に思った私は、今後新たな物件を探す手伝いをするという約束と、この住宅を販売した会社に努めている知人にこの物件についての噂を聞いてみるという約束をしました。 すぐに知人に頼み込み、渋る知人よりやっとの思いで話を聞き出すと、普通ではあり得ない事実が。 「確かに新築なのは間違いないです。ただ・・・。」 「なんですか?言って下さい。」 「実は、建築中に足場を蔦って2階の窓から入り込んだ浮浪者が死んでいたんです。警察が来て大騒ぎになって・・・。会社の評判もあるし私達は建築主と近隣の皆さんに口止めしたんです。」 「しかも、完成した新居の建築主は1年で、また、次の購入者は半年で出て行ったんです。」 その事実を親戚の彼女に伝えると、妙に納得したような表情をしました。 彼女が言うには 「近所や町内の人達に挨拶に行った時に、不自然な笑顔が気になっていた。」 というのです。 私は直ぐ様彼女らに引っ越しを勧め、今は広めのマンションに住んでいます。 彼女らには「新築の事故物件」だった建物は取り壊し、土地を売却させましたが、今は後の購入者の方に奇妙な事が起きない事を祈るばかりです。
/477ページ

最初のコメントを投稿しよう!