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「あ、今晩は。今、妻を呼んでき・・・」
そう言いかけた時です。
「うわぁん。」
急に泣き出したのです。
そして電話が・・・。
○美さんの旦那さんからでした。
「あっ○○です。○美行ってませんか?」
「今、訪ねて来ましたけど。何かあったんですか?」
「母が今、息を引き取りました。電話で病院へ来いと言おうとしたんですが。」
「え?わかりました。私が車で行きますよ。」
子供達に留守番を頼み、妻と私は○美さんの言う病院へ。
怒る息子さんを宥め、私達も旅立たれた○○さんに手を併せました。
「こいつが取り乱して・・・。すいません。」
「気にしないで下さい。でも急に具合いでも?」
「いえ・・・、2ヶ月前から血圧が高くて、歩く事も出来ないんです。」
「え?でも2日前に・・・。」
私は妻の「言うな」という視線を感じ、肘うちを受けました。
後日、一連の葬儀も終え皆が落ち着きを取り戻した頃、裏の夫婦とお茶の席であの時の話をしたのです。
2人とも驚いていました。
「そうですか。母は○○さんとよく着物の貸し借りをしてましたから・・・。あの着物の柄や帯が素敵でとか、男にはさっぱり分からない話で。」
と言われ、私も同感でした。
「今頃、2人で着物の話でもしてるんじゃないの?」
と4人で笑ってしまいましたが、2人から聞いた話だと、○○さんが私の前に来た時間から危篤状態になったのだそうです。
そして息子さんが聞いたうわ言が
「○○ちゃん・・・、長襦袢貸して。」
だったそうです。
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