三章

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「それがね、…今日、…あの人……お父さんの…顔を…見たら、……嬉しさが込み上げてきて、『ただいま』って言いそうになった……」 美沙から涙が流れ落ちた。 咲希は、そっと美沙に近寄り抱きしめた。 「本当は昔みたいに笑って一緒にくらしたいよ!なんで!なんで!別々に暮らさないといけないの!なんで!うわーん!!!」 泣きながら叫ぶ美沙を、咲希は抱きしめたまま、頭を撫でた。 「辛かったよね……。でもさ、美沙ちゃんはもっと素直になってもいいんじゃないかな?会いたければいつでも会いに来ちゃいなさいよ。きっと、おじさんも喜ぶよ」 「……でも、……お母さんが」 「うん。お母さんの気持ちを大切にしてるんだよね。でも、美沙ちゃんのお父さんは一人しかいないでしょ?たった一人のお父さん……。本当に会えなくなったら後悔するよ!少しでも会いたいと思ったら、会った方がいいよ!お母さんも、ちゃんと分かってくれるから!」 咲希の父親は、まだ咲希が小さい頃、事故で亡くなっていた。 「咲希ちゃん……。ありがとう、……美沙、……ちょっとずつ、……頑張ってみるね」 「うん。じゃあ、どうする?戻る?」 咲希は、美沙の頭をよしよしと撫でている。 「ううん。今日は止めておく」 美沙は、涙を拭うと笑顔を浮かべた。 「よし!じゃあ、駅まで送るよ!」 「いいよぉ。一人で帰れるから」 「たまにはお姉さんらしい事させなさい!行こ!」 咲希は、そっと手をさしのべた。 「……ありがとう」 夕日に照らされた二人は、手を繋いで駅へ向かった。
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