2012年1月1日記念書き下ろし~新年初騒ぎ~

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一月一日。 「結菜、はぐれるからお母さんから離れちゃ駄目よ」 「分かってるよ」  …とは言ったものの。  やっと人混みから抜け出して一人 木の下に佇む。 「…どう、しよう……はぐれ…ちゃった………」  誰かに連絡をしようにも、不運なことに今日は家に携帯を忘れてきてしまった。 「よりによって今日忘れてくるなんて……」  じわっと目に涙が浮かぶ。  一歩進むのすら難儀なこの人混みの中、会える確率は果たしてどれくらいだろう。  このまま会えなかったら……と強い不安が込み上げてきて、涙で視界が滲んだ。  ――それでも、何とか自分を奮い立たせて人混みを見やる。 (ここで泣いてたって仕方ないんだから……! …とりあえず、ここに居たほうが良いの、かな……。下手に動いたらすれ違っちゃうかもしれないもんね……) 「「結菜姉!!」」 (…? 今、名前を呼ばれたような……気のせいかな)  …と、その時ふいに後ろから肩を叩かれ、ビクッと大げさなくらい驚いて後ろを振り返る。 「……!!!! …あ。皆どうしてここに…?」  そこには、いつものメンバーが笑って立っていた。 「それはこっちのセリフだ。結菜、母さんたちと来てたんじゃなかったのか?」  苦笑いして問いかけてきたのは、いとこの篤斗。彼は、黒いレザージャケットにジーンズ、十字のペンダントという、オシャレな格好をしていた。 「…あ~……えっと…それは………」  口ごもった結菜の頭を、ぽんぽんと軽く叩いて桜色の髪をした男はニッコリ笑った。 「…迷子だもんな~? 結菜」 「ま、迷子じゃないもん……!! ちょっとはぐれただけで……!」  茶色い瞳を見返して頬を膨らませる。  ―彼は幼稚園からの幼なじみであり腐れ縁でもある靖吉。  瞳と同じ焦げ茶のピーコートから覗くオレンジ色のセーターは、彼の明るい性格を映しているかのようだ。 「やっぱり結菜は迷ちゃんだな~」  と、真面目な顔で言ったのは、隣人の家族で2・3歳年上の大学生の言成。  彼は、上下ともウインドブレーカーに身を包んでいた。 「だから……!!」 「…結菜。諦めたら……?」 「無駄だと思うぞ」  尚も否定しようとした結菜を諫(いさ)めたのはいとこの兄弟 汀卒と律。  長く伸びたきれいな髪をそのまま垂らし、灰色のダッフルコートを着たフランス人のお母さん似の汀卒と。  対象的に漆黒の短髪にジージャンを着ているのが律。
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