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容姿はまるきり正反対だけど、とても仲が良いのがこの兄弟だ。
…そしてあと二人、最初に結菜を呼んだであろう二人が居るのだ。
「じゃあさじゃあさ! 迷子だったら、僕たちが家に連れて帰っても大丈夫だね!!」
「そうだね、仙! だって迷子だったら一人で帰れないから逃げられないもんね!!」
恐怖めいた言葉を笑いながら口にしているのは8歳年下のいとこ、仙と素央。とても元気で、年相応の背丈であるのに、年に到底そぐわない発言ばかりの双子である。
無邪気に笑う彼らは、色違いの赤と青のジャンパーを着ていた。
「…で? 迷子なんだろ?」
「違……」
「…ふ~ん? それ本当だな? …なら、俺らがこのまま結菜をここに放って行っても何ら問題はない、と?」
わざと、挑発するように笑ってみせた靖吉の言葉に、案の定 結菜が言葉に詰まった。
「…そ、それ……は…………」
ここで強がって、本当に置いていかれでもしたら大変困る。 今度こそ泣くのは確定だ。
「…ん? だって迷子では、ないんだろ?」
「………………」
「…どうなんだ?」
わざと念を押して訊くと、結菜は顔を俯かせて小さく呟いた。
「…迷子………です……」
やっと折れた結菜を見て楽しそうに笑うと、靖吉はウエストポーチからおもむろに携帯を取り出して、慣れた手つきで電話をかけた。
すぐに聞き慣れた声が聞こえてくる。
「…あ、仁戸? …そう。迷子発見したからさ、これからお参りして、その後お前ん家行くわ。…うん、うん、分かった。夜一にも伝えといてな。じゃ、また後で」
短い通話を終えると、靖吉は結菜の顔を覗き込んだ。
「実はさ、俺たち、仁戸からの迷子捜索依頼を聞き入れてたんだよ。…義弟の仁戸も、兄さんの夜一もえらい心配してたぞ」
コツンと額を小突かれる。
「ご、ごめんなさい……」
一瞬にしてシュン…としおれた結菜の頭を、靖吉はくしゃりと撫でて微笑んだ。
「…なに、今度から気をつければいいさ」
励ますように笑いかけると、結菜は小さく頷いた。
「…うん。今度からは気をつける……」
その様子に微笑した汀卒が口を開く。
「…じゃ、反省はここまでにして。お参り、行こっか?」
「そうだな」
「だな。…あ、でもまた結菜が迷子になるんじゃ……?」
賛同した律と言成だったが、言成がそんなことに思い当たって眉をひそめると、篤斗と靖吉がこともなげに同時に声を上げた。
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