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『タロちゃん聞いて、ヒロがね』
『タロちゃん、ヒロってね……』
ヒロの事ばかり。
なんだか面白くない。
初めてヒロがやって来た日。
メリちゃんよりもずっと大きくて、こわい顔。
おっきな手で乱暴に頭を撫でるから、痛くてぼくは怒ったんだ。
そしたらメリちゃんが、ぼくを怒った。
なんで?
いつでもぼくを1番に思ってくれてたのに。
話しかけても、
『タロちゃん、後でね』
ヒロが、先。
ぼくは、あと。
おっきくて優しくないヒロに、メリちゃんをとられた。
ぼくは悲しくて、悔しくて、切なくて、苦しくて。
だから、ここを出ることにした。
メリちゃんの事が大好きなのに、一緒にいると辛いんだもの。
それからいくつかの夜を越え、朝を迎え。
ぼくは、気ままな暮らしも悪くないな、なんて思いながら、ぶらりと街を歩いていた。
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