『笑顔6』

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『家出かい』  突然、見知らぬ黒猫に声をかけられて立ち止まると、彼はくいと顎をあげ、傍の柱を見上げた。  ぼくもつられて見上げると、そこには。 「ぼくの、顔……」 『あちこちに貼ってるよ、あんたの飼い主がね。ご苦労なこった』  家なんてないほうが気楽だよ、と呟きながら黒猫は去り、再び一人になったぼくはもう一度、柱を見上げた。  メリちゃん、ぼくを探してるの?  ヒロがいるのに? 「見かけたら、教えてください」  聞き覚えのある声に振り向くと。  遠くの柱に、紙を貼付けてる大きな人。  ヒロの、後ろ姿。 「お兄さんちの猫ちゃん?」  おばさんに声をかけられて、ぺこりと頭を下げている。 「家族なもんで」  なんだよ。  ヒロんちじゃないよ。  メリちゃんちだよ。  だけど……。 『あの大男、お前の飼い主?』  突然『上』から声が聞こえ、見上げると。  真っ黒な髪に真っ黒な服きた、若い男が浮かんでいた。  
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