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『家出かい』
突然、見知らぬ黒猫に声をかけられて立ち止まると、彼はくいと顎をあげ、傍の柱を見上げた。
ぼくもつられて見上げると、そこには。
「ぼくの、顔……」
『あちこちに貼ってるよ、あんたの飼い主がね。ご苦労なこった』
家なんてないほうが気楽だよ、と呟きながら黒猫は去り、再び一人になったぼくはもう一度、柱を見上げた。
メリちゃん、ぼくを探してるの?
ヒロがいるのに?
「見かけたら、教えてください」
聞き覚えのある声に振り向くと。
遠くの柱に、紙を貼付けてる大きな人。
ヒロの、後ろ姿。
「お兄さんちの猫ちゃん?」
おばさんに声をかけられて、ぺこりと頭を下げている。
「家族なもんで」
なんだよ。
ヒロんちじゃないよ。
メリちゃんちだよ。
だけど……。
『あの大男、お前の飼い主?』
突然『上』から声が聞こえ、見上げると。
真っ黒な髪に真っ黒な服きた、若い男が浮かんでいた。
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