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あれ? 人間て、空を飛べるの?
『飛べねえよ。俺は人間じゃない、人間は俺を死神と呼ぶ』
しにがみ?
『……のピカピカ新入社員だ』
よくわからない。
『気にするな。お気の毒だがあの男とはそろそろお別れだ。心置きなく甘えてくるといい』
このひと、なにいってるのかな。
大体ヒロは飼い主じゃないし、関係ない。
『なんだ、飼い主じゃないのか? もう何日もああしてお前を探してるのに』
ぼくは驚いて、もう一度ヒロを見つめた。
ボサボサ頭に、サンダルを引きずって歩く後ろ姿。
『まあいい。あと少しで俺のデビュー戦なんだ。あの大男がトラックに引かれたら、すぐに魂を引き抜いて連れていかなきゃならない。邪魔したな』
え?
ヒロ、どこかに連れていかれちゃうの?
男は左手で頭を掻き、ほんの少し肩をすくめた。
『この世界の言葉で言うなら、あいつはこの後、<死ぬ>事になっている。おっとそろそろ時間だ。じゃあな』
ふわりと身体を浮かせ、滑るように去っていった男の後ろ姿を目で追いながら、ぼくは必死に考えていた。
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